「ウェブ時代をゆく」

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)


最近は、新しい本を読むよりも、過去に読んだ本でいいなぁと思った本を
なるべく読み直してるようにしてるんだけど、今日読み終えた本が、この
梅田さんの「ウェブ時代をゆく」。


前作「ウェブ進化論」も感銘を受けたんだけど、それよりもインパクトが
あったのが、この本。梅田さんの著書の中では、一番好きな本で、これから
社会に出て生きていかなければならない僕にとっては、バイブルともいえる本。


ウェブ進化論」が、グーグル、リナックス等をはじめとしたIT技術の進歩によって、
近未来、我々の生活、社会、産業がどのように変化していくのかが述べられているのに
対して、本書では、実際に大変化がおこるであろうこれから、我々がウェブを活かして
、個人としてどうサバイバルしていけば良いのかが書かれてある。


どの章も参考になるのだが、とくに印象をうけたのが、3、4、6章。

第三章は「高速道路」と「けものみち」ということで、前作でも紹介されていた、
羽生善治さんの「高速道路とその先の渋滞」論を巡る考察。ウェブ進化で、どんな道でも
急速にレベルアップしていく道路が整備された一方で、その先では大渋滞。つまり、その分野
で突き抜けようと思ったら、本当に「好き」を貫いていくしかない。

一方で、では渋滞を抜けられなかった人はどうするのか?という問いに対し、梅田さんは
けものみち」を歩むことを推奨している。遠山雄亮4段が例としてあげられていたが、
「無限から有限のマッピング」を通じて、自分の興味・関心・志向性・専門性の複合から、
サバイバルしていく。


自分がどっちを歩むか?と問われれば、「けものみち」と答えたい。高速道路を進む可能性を
放棄する訳ではないけれど、どちらかといえば、あるゆる方向に興味・関心がある、少し悪く
言えば志向性が散漫な自分にとって、あらゆるスキル・専門・能力を身につけながら、人間力
もふくめて総合的に勝負していくことの方が向いているのではないかという気がした。


第四章はロールモデル思考法。これは、自分の「好きなもの」「やりたいこと」を外界の情報
から求めて、お手本=ロールモデルを収集していく思考法。
梅田さんは、20代読書を通じて、ロールモデルを探し出し、自分の将来を構築していった
ようだったが、 僕が大学にはいって本をよく読むようになったのも、実は無意識のうちに
ロールモデル」を探していたからなのではないか、という気がする。
「生きるために水を飲むような読書」という言葉には本当に共感できる。
読書、そしてネットを通じ、ロールモデルを探し出し、自分の志向性を模索していきたい。


第六章は、大組織VS小組織。就職活動が、遠くない先に迫った自分にとって、これは割と身近な
テーマ。僕としては、成長のピークを迎えた大企業よりも、これから成長・発展していくだろう
小さな組織の方が魅力を感じる。ただ、この問題が個別の組織がどうのような企業風土・文化・組織
なのかってこととも関連してくるテーマなので、一概にはいえないと思う。
ただ、自分の性格上、大組織の「駒」になることは、どうしても避けたいことなので、(そういった
意味で、公務員など、がちがちの官僚組織もダメ)、「小さな組織で働き、少しでもいい場所に移ろう」
という梅田さんの提唱には頷くことができる。


この章を読んでいて、ふと思ったのは、僕のロール・モデルでもある中田英寿さんと、ジョゼ・モウリーニョ
サッカーが好きなことから、この2人のカリスマのことはよく知っているのだけど、この2人こそ、
「小さな組織で働き、少しでもいい場所に移ろう」を体現した2人だと思う。


「鼓動」という本を読んでよく分かるんだけど、中田英寿さんも小さな組織から出発して、
見晴らしの良いところへ移った人。高校からその才能を評価され、Jリーグの11チームから
もオファーを受けた中田。その中で彼が選択したのは、必ずしも強豪とはいえないベルマーレ
自分のサッカーをやらせてもらえるという理由からの選択らしいが、彼がここから、オリンピック、
W杯、そして今でこそ当たり前となったが、当時はまだ日本人は道が険しかった海外移籍。
小さな組織から見晴らしの良いところへ立った良い例。


モウリーニョ監督もそうで、現役時代にはプロになれなかったモウリーニョだが、
その後監督への道を志す。大学で体育学を学ぶ、数カ国語をあやつり、コーチとして、
サッカーを学んだあと、満を持して監督へ。ベンフィカでは不本意ながら解任の憂き目にあう
が、その後、小さなクラブ、レイリアで大活躍。そのポルトチェルシーへ移りわたり、
「良い場所」へわたっていく。


中田英寿 鼓動 (幻冬舎文庫)

中田英寿 鼓動 (幻冬舎文庫)

ジョゼ・モウリーニョ

ジョゼ・モウリーニョ


さて、この本の「病的なまでに心配性な人だけが生き残る」と「オプティミズム」を両立
させることで、サバイバルできる確率が上がると書いてある。まだ社会に出たことのない
自分にとってこの言葉の本当の意味というのはまだつかみかねるところがあるのだけれど、
この言葉で、ポジティブなエネルギーが沸くのも確か。
ともかく、自分の志向性を追求して、けものみちを歩むのは確かに困難なことではあるけれど、
オプティミズムな気持ちを持って、アンテナを高く広く張って、自分の志向性の核を模索
していきたいと思う。